<施策・機関の概要>

子どもシェルターは、子どもの緊急避難所です。親に養育されなくなった子ども、親から虐待を受けて家出した子ども、非行をして少年院や少年鑑別所を出たけれど行く先のない子ども等、居場所を失って緊急に保護される必要のある子どもが利用します。児童養護施設や自立援助ホームなど落ち着く所が決まるまで、衣食住の提供とスタッフのケアを受けて生活します。本来は児童相談所に付設された一時保護所が公的な子ども避難所として存在してきたのですが、①18歳以上の子どもは児童福祉法の適用外であること、②一時保護所の集団生活が向いていない子どももいること、③通学したい子どもについて(安全面で問題がなくとも)一時保護所では原則として通学を認めていなこと等の理由で、一時保護所を利用できない場合があります。

このような制度の欠陥を埋めようとして、2004年に東京の弁護士や福祉関係者、市民によって、初の民間の子どもシェルター(カリヨン)が設立され、今では全国に7つのシェルター(横浜、愛知、京都、岡山、広島、福岡)が存在しています。児童福祉法に具体的に明記された施設ではなく、児童相談所の一時保護委託の委託先となることによって、児童相談所と連携している、という関係でしたが、最近「自立援助ホーム」の一類型という扱いをうけるようになり、少しずつ公的財政援助も増えてきました。

 

<Q&A>

Q1 親から家出してきた場合に、親に連れ戻される危険はないのですか?

そのような危険を減らすために、シェルターの所在地は公開されていません。また原則として子どもの外出は認めていません。法的には、児童相談所の一時保護委託を受けた子どもについては、児童相談所と同じ立場で親の親権に対抗できるので、安全なのですが、親はそれでも納得しませんので、シェルターと連携している弁護士が子どもの代理人になって親と交渉して親子関係を調整したり、「子どもの生活を妨害しない」という約束を取り付けたりします。それでも子どもの安全を守りきれない場合には、弁護士が代理人となって家庭裁判所に親権喪失や親権停止を申立て、親の行動を制限します。

 

Q2 どのような手順で入居できるのですか。申込資格の制限はあるのですか?

多くのシェルターでは、一般に公開されているシェルター事務所(シェルター自体とは別の場所)に、本人あるいは支援者が電話をかけ、スタッフやシェルターと連携した弁護士と連絡をとり、入居中の生活の説明を受けて、入居の契約をします。東京のシェルターでは、原則として東京弁護士会の電話相談(子どもの人権110番)を経由することになっているようです。

資格として、厳格な年齢制限はないようですが、自己の意思で入居を希望し、かつ契約をすることが入居利用の原則(親が弁護士と交渉する時も「本人から頼まれた」と言えることが前提)ですので、おのずから10代後半の子ども、ということでしょう。また公的な財政支援に伴って入居希望者の親元(都道府県)がどこか、ということも影響するようになりました。そのほか現在の入居者の具体的状況によって新入居者を受け入れられないこともありますので、各々のシェルター事務所に問い合わせて下さい。また共同生活のルールを守れない場合は、入居を拒否されることは言うまでもありません。

 

Q3 入居中はどのような生活になるのですか?

 

まず日常的に安心できる生活を取り戻す、ということで、個室を用意し、他の利用者との団欒や食事は居室ですることになります。禁酒禁煙は当然です。友人との電話や外出は秘匿の必要から原則禁止ですが、子どもの状況(親が探し回っていない等)に応じて許可されます。通学やアルバイトについても同様です。また必要に応じて医師の診察を受けたり、心理カウンセリングを受けたりします。スタッフや担当弁護士との接触の中で、大人との信頼感を回復し、少しでも精神的に豊かな生活を送ってもらおうと、それぞれのシェルターが工夫をしています。

 

Q4 どの位の期間、居住できるのですか?

各シェルターの方針や子どもの状況によってちがいます。原則1ないし2か月とする所が多いようです。この期間内に自立援助ホームやアパート暮らしに移れるよう、スタッフのサポートを受けて健康保険を取得したり(必要ならば)生活保護の準備などをします。

 

Q5 弁護士はいろいろな役割を果たすようですが、その費用は利用者が負担するのですか?

弁護士の役割を整理すると、入居の希望を受けてシェルターの運営機関につなぎ、入居後は子どもの担当弁護士として子どもの相談にのり、親と対応し、ケースワーク会議に参加し、退居後のために法的なサポート(アパート申込、健康保険など)をします。

これらの役割に対する弁護士の費用は、子どもが負担する必要はありません。法テラスの援助の制度が可能な場合には、弁護士がそのための手続もします。