<施策・機関の概要>

現在、日本には200万人以上の外国人市民が生活しています。日本国籍だけど外国にルーツをもつ人なども含めるとさらに多くの人がいます。とくに両親が国際結婚でお父さんが日本人、お母さんが外国人などの場合、子どもは日本国籍、日本の名前で生活していることも多く、子どもの姿だけではルーツがわからないこともあります。

外国にルーツをもつ子どもの家庭では、保護者が工場での派遣請負労働などの不安定な就労状況にある場合が多く、また、ドメスティック・バイオレンスの被害に苦しむ国際結婚をした女性も多くいます。さらに、言葉の壁や文化の違いから日本の制度に関する情報を得ることが難しく、家族や友人なども少なく、孤立していることもしばしばあります。

困難な状況にある外国にルーツをもつ子どもに出会ったとき、外国籍だから何をしたらいいのかわからない、言葉の問題などからよいサポートができないといった声を聞くこともありますが、あせらずにできることを探していただければ幸いです。

※この項目は、外国にルーツをもつ子どもや保護者の方が直接、情報にアクセスすることが難しいため、支援者向けに作成しています。

<Q&A>

Q1 外国にルーツをもつ子どもでも日本の制度が使えるのですか?

 

基本的に外国籍であっても日本の制度はほぼすべて使えます。ただし、在留資格の有無や種類によっては使えない制度もあるので、具体的な場面で役所や外国人支援団体などに相談してください。

 

Q2 外国にルーツをもつ子どもの支援にあたってどのようなことに気をつける必要がありますか?

 

文化の違いや言語面での配慮などが必要にしても、支援に当たって必要なことは基本的には日本の子どもと同じです。ただ、保護者も含め、「国籍」と「在留資格」には気をつける必要があります。国籍が日本の場合はよいのですが、外国籍の場合、在留資格の種類、期限に注意する必要があります。在留資格の期限が迫って、焦って支援を求めるということもしばしばあります。在留資格が一度切れてしまうと回復するのは大変です。在留資格の期限が迫っている場合は必要書類が整っていなくても在留資格の更新の申請だけでもする、期限が切れてしまっていても短期間の場合、特別に申請を受理してくれる場合もあるので、まずは入国管理局に相談してみるとよいと思います。

ただし、子ども自身が「国籍」や「在留資格」について知らない場合もありますし、それを答えたくない場合もあるかもしれません。その場合、保護者に確認することもありますが、あくまでも「国籍」や「在留資格」に関わらず、できることをサポートするということが大切です。

 

Q3 日本語が十分にできないようなのですが、どうしたらいいでしょうか?

 

日本語が十分にできない場合、通訳をつける必要があります。問題は、通訳者をどのように手配したらいいのかということかと思います。自治体によっては役所内に外国語の通訳者がいたり、地域の国際交流協会や支援団体で通訳者の派遣ないし窓口での通訳対応をしてくれる場合もあります。地域の資源を日ごろから確認しておくといいでしょう。また、通訳料をどのように確保するのかを検討しておくとよいと思います。

ただし、外国人の場合、狭いコミュニティで生活しているため、同国人にはプライベートなことを知られたくないなどの事情がある場合もあるので、配慮が必要です。

さらに、通訳が手配できない場合、日本語でのサポートとなることもあります。その場合、ゆっくりと、単語と単語の間で区切り、やさしい日本語で話す必要があります。相手の日本語レベルによっては「赤ちゃん扱い」されたと感じてしまうこともありますが、いずれにしてもそうした「伝わる日本語」の練習が必要です。

 

Q4 在留資格がないようなのですがどうしたらいいですか?

 

在留資格がない人にも当然ながら、基本的人権は保障されています。支援をしたからといって、何かの罪に問われるということも基本的にはありません。福祉制度についても一部の制度を除いては人道的な配慮から利用可能ですし、公的支援も受けることができます。また、在留資格がない人は入国管理局や警察に通報しなければいけないのではと思われがちですが、必ずしもそうではありません。法務省入国管理局からは次のような通知が出されています。

 

出入国管理及び難民認定法第62条第2項に基づく通報義務の解釈について(通知)

http://www.gender.go.jp/e-vaw/kanrentsuchi/04/h_02_1671.pdf

 

さらに、在留資格がない場合でも在留資格を取得することができる場合があります(在留特別許可といいます)。とりわけ、子どもがいる場合は、人道的な配慮から認められることも多くあります。入国管理局では在留が認められるかどうか個別ケースの見通しについては回答が難しいので、実務に精通した弁護士や行政書士、支援団体の人に聞くといいと思います。

 

Q5 「文化の違い」に戸惑ってしまうのですが、どうしたらいいでしょう

確かにしばしば「文化の違い」から対応が難しいこともあるもしれません。その場合、言葉の通訳だけでなく、心の通訳や文化の通訳をしてくれるような人がいてくれると非常に助かることが多くあります。そのような人と日頃からつながっておくことが大切でしょう。しかし、時として「言葉の壁」「文化の違い」に支援者が過剰に不安を感じてしまうこともあります。「文化の違い」と壁を作ってしまう前に、例えば、「同じような状況に置かれている日本の子ども、家族の場合、どうだろう」と想像してみるのもいいかもしれません。意外に支援者側が作ってしまっている壁、ということもあるかもしれません。

Q6 通訳など外国にルーツを持つ子どもの支援に必要な資源をどのように整備したらいいでしょうか?

通訳者の派遣制度や外国人対応の相談窓口が整備されている地域もありますが、そうしたものがまったくないということもあります。地域で外国にルーツをもつ子どもの支援に必要な資源をつくっていくという視点も必要でしょう。また、通訳や多言語情報、心や文化の通訳、外国人コミュニティなど多様な資源を活用していくことは難しいので、すべての資源に精通している地域のコーディネーターやキーパーソンと日常的につながっていくということが大切でしょう。

多言語の資料はインターネットで公開されているものもたくさんあります。例えば、次のようなものがあります。

 

自治体国際化協会 多言語生活情報

http://www.clair.or.jp/tagengo/

 

Q7 その他にどのようなことを知っておけばいいでしょうか?

 

子どもや保護者の母国の状況や母国の家族の状況、これまでの母国での生活状況を知っておくことも時には大切になってきます。とりわけ、家族というと日本にいる家族に目がいきがちですが、日本より家族の概念が広い国も多くあり、母国にいる親族なども含めた拡大家族を考える必要があります。また、日本での生活状況が大変なため、「国に帰れば」と言われ、傷つく人も多くいます。母国の経済状況などから容易には国に帰れない事情がある場合もあるので、母国の状況を知っておくことはそうした意味でも大切です。

その他、地域や関係者の外国人への眼差しが必ずしもあたたかいものではない場合もあります。誰もが共に生きることのできる社会づくりという大きな目標も忘れずにしたいものですね。